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夏休み英作文について(8) [自由英作文]

その他のヒント

 英作文について以上のようなことを漠然とながら考えていました。夏休みの英作文へのコメントはこのような考えによるものです。以下、あとから考えついた解決法をつけ加えて終わりにします。

 先に述べた間接的な表現は、なにも目の敵にするものではなく、うまく利用できれば効果はすこぶる大です。小学生のころ、上手な読書感想文のコツとして感情の形容詞を一切使わない書き方があると何かで読みました。当時の私の読書感想文はこういうことが書いてあって「おもしろかった」、こういう場面があって「悲しかった」という調子でしたので、いたく感心しました。これに似ていると思われるのが「著述家の技術はインクつぼに何を残すべきか知ることにある」(イェスペルセン, 2006, p. 185)という言い回しです(どの国のことわざかは不明。イェスペルセンはデンマークの英語学者)。「人を退屈させる秘訣は何もかも語ろうとすること」というヴォルテールの言葉も同じことを述べています。説明しすぎるとよくないこともあり、適切な省略がスムーズな伝達に役立つという発想はヨーロッパの思考にも存在するのです。ただ、どんなとき、どこを書かないかの選択がそれぞれ違うのです。今回の夏休みの作文では「これから英語の勉強をさらにがんばりたい」ということが言いたいことのひとつでした。これは直接書かなくても、ほかの方法で表現できたかもしれません。

 具体的には、多くの分量を書くことで意欲を示す方法がありました。もし語数が自由ならば、確実で、実行しやすい方法です。そうでなければ、中2までの英語教科書に出た文法事項をなるべく取り入れて書く方法がありました。たとえば、普通に書けば過去形だけになる作文で、あえて現在形・未来形・進行形を使えないか、さらには命令文・疑問文・感嘆文を使えないか考えてみます。そのように、みずからに制約を課し、表現を工夫せざるをえない状況を作るのです。私は大学入試の自由英作文でこれに近い方法を生徒さんにすすめています。

 その場合の制約はつぎの通りです。

  ・ 5文型のすべてを一度は使う
  ・ 単文・重文・複文をそれぞれ一度は使う
  ・ 仮定法を一度は使う
  ・ 比較級・最上級を一度は使う
  ・ 不定詞・動名詞をいくつか使う

すべて実現しなくても、やるだけやってみると、いい思いつきを呼び込むことがあります。大学入試やそれに至るまでのレベルの英作文ではたいていの人が同じような構文を単調に並べてしまいます。だから、難しい単語を使わなくても、内容が平凡でも、多彩な構文を心がけるだけで、ほかの解答からひき立って見えるはずです。つぎに英作文を書くときの一助にしてください。


参考文献

Leggett, Anthony J. (1966) Notes on the writing of scientific English for Japanese physicists 日本物理学会誌、第21巻
アリストテレス(1971)『ニコマコス倫理学(上)』(高田三郎訳)岩波文庫
イェスペルセン(2006)『文法の原理(下)』(安藤貞夫訳)岩波文庫
清水由美(2009)『辞書のすきま、すきまの言葉』(トム・ガリー監修)研究社
ジェニー・トマス(1998)『語用論入門』(浅羽亮一監修)研究社
西光義弘編(1999)『日英対照による英語学概論(増補版)』くろしお出版
マーク・ピーターセン(2014)『日本人の英語はなぜ間違うか』集英社インターナショナル
ロン・クラーク(2004)『あたりまえだけど、とても大切なこと』(亀井よし子訳)草思社


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