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カカオ・ココア・ココナッツの関係 [発音・綴り]

<カカオとココア><ココアとココナッツ>の関係について、ここまでは確実と思われる事柄。
今後どなたか調べる人もあるかと思いますので、わかったことをまとめておきます。

カカオは16世紀初頭にコロンブスがスペインに持ち帰りました。
ココナッツは15世紀にポルトガル人がインド洋の島で見つけました。


<カカオとココア>

●一般にcocoaはcacaoのmisspelling(誤記)から生じたと考えられているようです。
(この3つの単語でネットを検索すれば、そのような記述がいくつか見つかると思います)
実質的にはこれ以上のことはわかりませんでした。

●辞書類ではたいていalteration(変化)などの慎重な表現をしています。

●誰もが同じ間違いをするのでそれが定着したとか、影響力のある誰かの間違いが定着したといったことではなく、いくつかの形が併存した中からcocoaが残ったようです。
cocao, cacoaの形が記録されています。

●cocaoについては
Edward Phillips, The New World of English Words (1720年、初版1658年)
Nathaniel Bailey, An Universal Etymological English Dictionary (1763年、初版1721年)
に項目があり、chocolateの項目でも使用されています。
発音のゆれがあったとも想像されます。

●ヨーロッパのことばの中で、cacaoに対してcocoaのような変異をもつ言語はめずらしいようです。
英語のほかに絶無かどうかは不明ですが、次のサイトで各国語においてcocoaに相当する語を見れば、英語がほかとちがっていることは明らかです。
Translation of cocoa (Deifinitions. net)
Translation of cacao

●他の言語にはかつて変異が存在しなかったのか、英語で変異が定着したのにはどのような事情が働いたのか、という疑問が生じます。
しかし残念ながらどちらも私の手に余ります。


<ココアとココナッツ>

●こちらについてはOEDの編者James Murrayによる以下の記述があります。

The two words Coco and Cocoa—the former a Portuguese word[12], naming the coco−nut, the fruit of a palm−tree; the latter a latinized form of Cacao, the Aztec name of a Central American shrub, whence we have cocoa and chocolate—were always distinguished down to Johnson's time, and were in fact distinguished by Johnson himself in his own writings. His account of these in the Dictionary is quoted from Miller's Gardener's Dictionary and Hill's Materia Medica, in which the former is spelt coco and the latter cacao and cocoa. But in Johnson's Dictionary the two words are by some accident run together under the heading cocoa, with the disastrous result that modern vulgar usage mixes the two up, spells the coco−nut, 'cocoa−' as if it were co−co−a, and on the other hand pronounces cocoa, the cacao−bean and the beverage, as if it were coco.
The Evolution of English Lexicography

●ジョンソンの辞書(初版1755年)のミスプリントは次のサイトで見ることができます。
ココアの項目が、ココナッツの説明→カカオの説明になってしまっています。
A Dictionary of the English Language
Cocoa (2)
Page 401

●第2版からはカカオの説明のほうが抹消され、cocoaの見出しのもとにココナッツの説明だけが残りました。
その後長く訂正されなかったようです。
1785年の第6版

●このミスプリント以後ココアとココナッツが混同され、次の2つのことが生じたとMurrayは述べています。
(1) ココナッツがcocoanutとも綴られるようになった(現在の辞書にも記載されています)
(2) cocoaの発音が変わった、つまりaを読まない現在の発音になった(聞いてみてください)

●しかし、cacaoからcocoaの変異が生じた事情(たとえばそこにcoconutの影響があったかどうかなど)については、残念ながらここでは触れられていません。

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